極低温施設FAQ
よくある会話の流れ
- Q: 極低温施設はヘリウムを作ってるんでしょ?
A: いいえ。ヘリウムガスを原料として「液体ヘリウム」を製造しています。ヘリウム液化機でヘリウムを液化しているだけです。
ヘリウムを作るには、ウランやトリウムの放射性崩壊(α崩壊)か、水素の核融合が必要です。
- Q: えぇっ、ヘリウムって空気からつくるんじゃないの!?
A: いいえ、残念ながらヘリウムは空気中に5ppm(0.0005%)しかなく、これを集めるのは割に合いません。ヘリウムは天然ガスから採取される高価な希少資源で、その産地は限られ、日本は輸入に頼っています。
- Q: じゃあ窒素は?
A: 極低温施設では大気を原料にして「液体窒素」を製造しています。空気の78%が窒素ですが、これを窒素液化機で分離・液化します。化学的な合成や分解はしていませんが、「窒素を作ってる」と言っても間違いではありません。
- Q: 液化するには、やっぱり圧縮するんですか?
A: はい、しかしそれだけでは液化しません。(この質問をされる方は、臨界温度が高く常温で液化するフロンやプロパンガス、二酸化炭素などが念頭にあるようです)
- Q: じゃあどうやって液化するんですか?
A: 沸点まで冷してやります(大気圧においてヘリウム-269℃、窒素-196℃)。でも普通のフロンやアンモニアを使った冷凍機では無理な温度です。
液化機はヘリウムや空気自体を冷媒とした冷凍機のようなもので、断熱膨張やジュール・トムソン効果によって温度を下げていきます。(クロードサイクル)
- Q: なるほど、そして圧縮したガスが(全て)液になるわけですね?
A: いいえ、ガスの大半は冷媒として圧縮機と、膨張機や熱交換器とを回っているだけです。これで何かを冷やせば冷凍機ですが、ガスの一部を液になるまで冷やして貯めるのが液化機です。圧縮したガスのほんの一部しか液になりません。
また、以前使用していた逆スターリングサイクル冷凍機を用いた窒素液化装置では、冷媒として圧縮・膨張していたのはヘリウムガスです。窒素の原料となる圧縮空気はPSAで処理した後、減圧してから冷凍機へ送っていました(圧縮することで液化したわけではない)。
経理事務担当者が変わる度に聞かれること
- Q: 極低温施設は液体ヘリウムを作ってるのに、なぜ業者から(液体)ヘリウムを買うのですか?
A: 液体ヘリウムは蒸発してガスに戻りますが、極低温施設ではそれを回収して再び液化というリサイクルをしています。しかし様々な損失でヘリウムの保有量が減ってきますので、たまに補充しなければなりません。
- Q: なぜ液を買うのですか、ガスを買って液化するんじゃないのですか?
A: ヘリウムはガス(150気圧か200気圧の高圧ボンベ)と液(断熱容器、大きな魔法瓶)の二形態で流通しており、どちらを買うかは用途で必然的に決ります。幸いリサイクルの補充にはどちらでも対応できますが、それぞれ得失があり、現状では液が有利と考えています。
どちらがよいかには諸事情あり、地域、時代によっても異ります。液化しない分ガスが安い、とは限りません。(ヘリウムはガスよりも体積の有利な液で輸入されてきます)
- Q: たまにボンベでガスを買うのは?
A: 液化の原料以外にも、機器の都合で高圧・高純度のヘリウムや窒素ガスを用いることがあります。(パージや加圧用)
書きかけ
- Q: 「極」は何て読むの?
A: きょく・ごく
- Q: 液化窒素? 液体窒素?
A: (酸素の例Q-13)
- Q: 寒剤は何に使うの?
A: