極低温センターは液体窒素(-196℃,77K)および液体ヘリウム(-269℃,4K)を製造し,全学の研究室等へ供給しています.センター内にはヘリウムガス回収配管を備えた実験室があり,液体ヘリウムを大量に用いる実験をできるようにしています.ヘリウムは希少資源のため,リサイクル(ガスを回収して再液化)しています.
窒素液化機 | ヘリウム液化機 |
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現在,極低温センター内の実験室では,極低温から高温領域にわたる物性研究が行われています.この実験室を利用して,主に理学部物理系の大学院生,学部4年生等の教育・研究が行われて,先端的な物性の知識を十分に身に付けた学生を輩出し,卒業後に県内外で活躍する人材をこれまで送り出してきました.
極低温センターでは,低温・高温,高圧力中および強磁場中における磁性および電気伝導・熱電能等の電子輸送現象の研究を行う磁性グループと,核磁気共鳴(NMR),核四重極共鳴(NQR)法を用いて測定試料の原子核を探針とし微視的見地から固体の磁気的,電気的特性や相転移等の研究を行うNMR物性グループが実験研究を行っています.
磁性グループが保有している強磁場中熱電能測定装置は,琉球大学で独自に開発した「シーソーヒーティング法」と呼ばれる測定法を用い,超伝導マグネットによる17 テスラまでの強磁場,極低温から室温までの任意の温度,4ギガパスカルまでの高圧力中で熱電能および電気抵抗率が同時測定できる世界で唯一の装置です.また,1000 ℃までの高温領域で電気抵抗率および熱電能が同時測定できる装置は,全世界に3台(他はロシアとドイツ)しかありません.そのため,国内外の多くの研究室から試料の測定依頼があり,また研究者が来学し測定を行っています.この高温領域の測定装置は,温度差発電等の応用のための基礎研究にも非常に有用です.
NMR物性グループでは,超伝導マグネットを用いた高精度のNMR装置によって実験研究を行っています.同一装置を用いてNQRの実験も行えます.NMR・NQR装置は広範囲の周波数領域で極低温から測定できるため,さまざまの実験に対応でき,その性能は国内では,トップクラスに入ります.そのため,これまで国内および海外との多くの共同研究を行い,超伝導,高温超伝導,磁性,重い電子系のような強相関電子系の研究で多くの成果をあげてきました.