業務報告

目次

極低温センター 業務報告
資料 1 琉球大学極低温センター概要リーフレット
資料 2 琉球大学極低温センター規則
資料 3 琉球大学極低温センター自己評価委員会規程
資料 4 琉球大学極低温センター高圧ガス製造危害予防規程
資料 5 琉球大学極低温センター保安教育計画
資料 6 琉球大学極低温センター液体窒素、液体ヘリウム供給細則
資料 7 極低温センターのあゆみ (琉球大学50周年記念史から抜粋)
資料 8 極低温センター運営委員会
資料 9 施設概要
資料 10 施設整備状況
資料 11 利用者登録状況
資料 12 登録研究室一覧
資料 13 寒剤供給量
資料 14 極低温センター保安管理組織
資料 15 高圧ガス保安法による各種検査実施状況
資料 16 高圧ガス設備運転記録用紙
資料 17 極低温寒剤−安全の手引き−
資料 18 保安教育テキスト−液体窒素利用の手引き−
資料 19 極低温センターだより 創刊号〜第3・4合併号


平成12年12月
琉球大学 極低温センター


極低温センター 業務報告

平成12年12月

1. 極低温センター概要
 琉球大学極低温センター(資料1)は、琉球大学極低温センター規則(資料2)によって設置された学内共同利用施設であり、寒剤(液体窒素−196℃・液体ヘリウム−269℃)を製造・供給するとともに、寒剤を用いた教育・研究を行っている。定員は技官1であり、教官は全員併任である。また最近、極低温センター自己評価委員会規程(資料3)も制定された。
 極低温センターには高圧ガス保安法が適用され、第一種製造者に該当し一般高圧ガス製造施設として沖縄県より承認を受けている。そのため危害予防規程(資料4)、保安教育計画(資料5)、供給細則(資料6)も制定されている。(法律名が「高圧ガス取締法」から「高圧ガス保安法」へ改称されたのに伴い、現在表記の改定作業中である。)
 寒剤供給にあたり、保安管理を徹底するため利用者は登録制とし、保安教育を実施してている。また受益者負担制を取っており、設備維持費と利用者からの受益者負担金で寒剤を製造している。
 琉球大学50周年記念史(資料7)には極低温センターの歴史等が記されている。

2. 管理運営
 琉球大学極低温センター規則(資料2)に基づき、受益者のいる全ての学部から代表が参加して運営委員会(資料8)を構成している。年2回ほど委員会を開き、極低温センターの寒剤供給業務、予算、その他必要事項を審議決定している。

3. 施設設備
 現有の施設概要は資料9の通りであり、施設整備状況を資料10に示す。

4. 寒剤供給
(1) 利用者登録制度
 研究室単位で利用者全員の名簿を年度始めに提出する。未登録者は極低温センターを利用できない。新利用者には後述する保安教育の受講を義務付けている。
 各年度の利用者登録状況を資料11、本年度の登録研究室一覧を資料12に示す。

(2) 利用方法
 供給作業は寒剤利用者のセルフサービスとし、技官と労力提供グループ[磁性研(矢ヶ崎克馬、仲間隆男)と核磁気共鳴研(二木治雄)]が補助をしている。利用手続きは毎回伝票を提出し、所定の記録を義務付けている。「供給細則」(資料6)を設けているが、実際は受益者の便宜を考慮して運営している。
(3) 受益者負担額
 液体窒素は一律150円/リットルで供給している。離島圏沖縄にあっては業者価格約300円/リットルのおよそ半額である。代金は利用者の校費から支出されるので、琉球大学の研究補助として大いに貢献している。
 液体ヘリウムについては、使用状況に応じた負担額を設定している。空気から製造される液体窒素と異り、原料のヘリウムガスが非常に高価なため、使用後は蒸発したヘリウムをガスとして回収し、リサイクルすることが重要である。しかし現在のところ、ガス回収配管等そのための設備は、極低温センター内にしか用意されていない。
・ガス回収し労力も提供するグループは、150円/リットル
・ガス回収はするが労力は提供しない場合、750円/リットル。
  (現在この条件の利用者は無い。)
・ガス回収しない場合、2,250円/リットル。
(高分解能NMRの超伝導磁石冷却用がほとんどで、極低温センター外にあるため回収が難しいが、年間使用量はわずかである。)
 なお業者価格は二千円/リットル前後(ガスは回収しない)であるが、輸送費の割合が大きいため一回の購入量により単価が大きく異なり、少量での購入は非常に高くつく。

(4) 供給量
 寒剤供給量の推移を資料13に示す。
 液体窒素の利用者は各学部に広がり、利用方法も装置の冷却から生体の凍結保存まで多岐にわたる。
 液体ヘリウムの利用者は限られており、琉球大学における物性的材料的実験研究者の希少さを反映している。液体ヘリウムを大量に用いる実験は極低温センター内で活発に行われているが、実験室は不足しており、他大学のような各学部−センター間のガス回収用パイプラインもないため、利用者は増えにくい。

(5) 液化
 液体窒素は、毎時25リットルの液化能力、液体ヘリウムは毎時15リットルの液化能力の設備を有している。窒素液化機は毎日8時間以上稼働しており、ヘリウム液化機は毎週数日、需要量に応じて運転している。運転管理はほとんど技官が行っている。

5. 保安
(1) 保安についての規則等
 高圧ガス保安法に基づき、琉球大学極低温センター高圧ガス製造危害予防規程(資料4)に安全確保の基本を定め、琉球大学極低温センター保安教育計画(資料5)に保安教育の基本的指針を定めている。
(2) 保安管理組織
 危害予防規程(資料4)の別表1に規定される保安管理組織は資料14の通りである。設立当初は1名であった高圧ガス製造保安責任者免状の保持者も、現在では5名を擁しており、定期的な保安係員講習も受けている。現行では保安係員に教官が指名されており、保安係員の代理者を複数名定めている。現場に最も密着度が高い運転操作員(技官)は事実上の現場責任者であるので、運転操作員を保安係員と定める方が現実対応型である等の改善意見が現場から提出されている。

(3) 検査・点検
 高圧ガス保安法で義務付けられた各種検査が実施されている(資料15)。高圧ガス設備の新設・変更があったときは、その都度沖縄県文化環境部消防防災課による完成検査を受ける。さらに年1回、定期自主検査を行った上で、県による保安検査を受ける。高圧ガス容器は刻印された年月に従い容器再検査を行う。また日常点検として計器の読み取り、異音の聞き取り、機器の目視確認などし、運転記録(資料16)を取っている。

(4) 保安教育
 寒剤取り扱いに関する保安教育および取り扱いのノウハウを記した資料として、2種類の冊子を発行している。基本冊子は、液体ヘリウムと液体窒素の物理的性質、容器、取り扱い等に関する全般的必要事項を網羅した「極低温寒剤−安全の手引き−」(資料17)であり、もう一つは液体窒素だけの使用者に対する必要知識を網羅した「保安教育テキスト−液体窒素利用の手引き−」(資料18)である。
 毎年度はじめに新利用者全員を対象に保安教育を行っている。液体窒素は新たな利用者が全学で毎年度150名前後あり、一組50名程度の3〜4組に分けて、知識と取り扱い実習を1時間から1時間半の時間を掛けて実施している。欠席すると利用者登録は取り消されるが、都合でやむを得ず出席できなかった者には個別に対応している。保安教育の実施状況は資料10に示している。

6. 教育
(1) 学部・大学院教育への貢献
 極低温センターは、学内への寒剤供給を主な任務としているが、併任教官による極低温から高温領域にわたる物性研究が極低温センター内に設置された実験室で行われている。ここでは、理学部物理系の大学院生、学部4年生等が研究を行っている。極低温センターの実験室内での教育によって、実験的素養を十分に身に付けた院生、学生を輩出し、卒業後に県内外で活躍している人材を育成している。現在概算要求を行っている極低温センターの省令施設化が実現し、広域温度物性開発センターに衣更えすることによって、より強固な研究基盤ができる。このことによってより先端的な研究を通しての教育を院生、学生に対して行なう事ができる。

(2) 科学教育への支援
 極低温センターでは、低温寒剤を用いて科学教育への支援を行っている。
i 学内では理学部体験ツアー、オープンキャンパス、セミナー授業、学園祭等において、液体窒素、液体ヘリウムを用いた実験やその指導を行っている。
ii 学外でも、青少年への科学教育への支援として液体窒素を用いた実験等を行っている。また、高等学校や中学校などでの理科教育で液体窒素を必要とする実験には、積極的に協力している。

7. 将来計画
(1) 極低温センターの省令施設化
i 極低温センターは、低温寒剤である液体窒素、液体ヘリウムを学内ユーザーに安定供給することを主任務としてきた。一方で極低温センターの設立によって学内で低温寒剤が安定供給されるようになると、これらの寒剤を使用した研究も年を追う毎に盛んになってきた。中でも液体ヘリウムを用いた極低温の物性研究は、極低温センターに併任する教官によって極低温センター内の実験室で活発に行われ、現在多くの成果をあげている。この研究過程で、極低温の物性研究のみならず高温領域での物性研究の重要性が認識され、研究が始まった。国内でも高温領域の物性研究の必要性は認識されているが、その研究は諸外国に比べて少ない。現在では、極低温センターが高温研究の一翼を担うまでになり、国内外での評価も高い。
ii これらの研究を総合的に展開するために、学内ユーザーへの寒剤供給を主任務とする極低温センターを省令施設とし(概算要求)、研究部門を設置することを目指す。名称も「広域温度物性開発センター」と変更し、これまでの低温寒剤供給部門に低温と高温の2研究部門を新たに加えて拡充整備し、琉球大学及び県内の物性研究の研究拠点にしたい。また、以下の理由から九州地区の物性研究拠点としての機能が果たせるように整備して行く。
iii 日本学術会議第17期の活動として、物理学研究連絡委員会・物性物理専門委員会は、「物性研究拠点整備計画の具体化に向けて」を決定した。(平成12年5月29日、第935回運営審議会において対外報告として決定)。その中で、琉球大学広域温度物性開発センターが正式に物性研究拠点として指名された。これは九州大学の極低温科学センター、熊本大学の衝撃・極端環境センターと共に「九州地区・物性研究センター」を構成するもので、九州地区の物性研究拠点として大変意義のあるものであり、実現に向けて努力する。
(2) 液体窒素と液体ヘリウムの液化機の更新
 窒素液化機およびヘリウム液化機は、平成3年度に設置された。ヘリウム液化機は平成3年6月29日に県の完成検査を、窒素液化機は平成4年8月28日に完成検査を受けて寒剤を供給し始めた。両液化機は設置されてから平成13年度で10年を迎える。現在、液化機の保守点検を十分に行い、寒剤の安定供給に努めているので寒剤供給を何とか円滑に行っている。しかし、設置されてから10年近くも経ているので、沖縄の高温多湿も影響して老朽化が激しい。また現在の生産能力では、今後需要が増大した場合に対応することができない。最近の液化機は、現有機種に比べて性能も格段に向上しているので、新機種に更新し寒剤の安定供給を円滑に行い、寒剤利用者の利便を図る。

8. 自己評価等
 業務報告と自己点検を兼ねて、「極低温センターだより」(資料19)を発行している。当初2年に1回程度発行する計画であったが、最近は状況が変わり、業務報告と寒剤使用の成果の確認等を自己評価の業務として毎年実施することが求められている。琉球大学が整備した自己点検・評価規則に従い、極低温センター自己評価委員会規程(資料3)を制定した。


資料8



極低温センター運営委員会

任   期
センター長  二木 治雄 教 授(理学部) 平成11年10月 1日〜平成13年 9月30日
教育学部委員 小柳 元彦 教 授 平成11年11月18日〜平成13年11月17日
理学部 委員 田中 淳一 助教授 平成11年11月18日〜平成13年11月17日
医学部 委員 田中 龍夫 教 授 平成11年11月18日〜平成13年11月17日
工学部 委員 和仁屋晴讙 助教授 平成11年11月18日〜平成13年11月17日
農学部 委員 川満 芳信 助 手 平成11年11月18日〜平成13年11月17日
保安係員   仲間 隆男 講 師(理学部)

資料9

施設概要 (平成12年12月現在)


ヘリウム液化システム

・ヘリウム液化機
 KOCH社(アメリカ)製 1410型
 純ガス運転時液化量15リットル/時、不純ガス精製運転時液化量12リットル/時
 (液化量は液化用圧縮機の容量の影響を大きく受ける)

・液体ヘリウムタンク
 貯液量250リットル

・ヘリウムガス液化用圧縮機
 神戸製鋼社製 HC-120型
 常用圧力1.6MPa、吐出容量120Nm3/時

・ヘリウムガス回収用圧縮機
 東亜潜水機社製 YS-85型2台
 常用圧力14.7MPa、吐出容量(1台当たり)240〜336リットル/分

・ヘリウムガス回収用バッグ
 最大容積5m3

・ヘリウムガス回収用ガスボンベ
 7Nm3ボンベ5×5=25本のカードル3基 (容積合計7Nm3×25本×3基=525Nm3)

・ヘリウムガス乾燥器
 常用圧力3.43MPa、内容積48リットル、ガス処理量20Nm3/時×50時間以上



窒素液化システム

・窒素液化機
 SCR社(オランダ)製 MNP25/2型
 液化量25リットル/時

・液体窒素貯蔵タンク
 内容積1400リットル、充填量1260リットル



建屋

事務室 17.5m2 分光実験室 24.8m2
ヘリウム液化室 57.0m2 電波物性実験室 39.2m2
窒素液化室 24.8m2 低温実験室 53.9m2
ボンベ室 24.8m2 固体物性実験室 53.9m2
圧縮機室 24.8m2 研究室 36.0m2
機械工作室 24.4m2 トイレ 7.2m2
電子工作室 8.0m2    計 451m2


資料10

施設整備状況


・設備導入

平成 3年 6月 ヘリウム液化システム
平成 4年 8月 窒素液化システム
平成 6年 5月 ヘリウムガス回収用圧縮機(増設による大型化)
平成 7年 4月 液体窒素供給用リットル表示はかり
平成 9年 3月 ヘリウムガス回収用ボンベ(カードルによる大型化)
平成11年 8月 液体ヘリウム供給用トランスファーチューブ架台
平成12年 3月 ヘリウムガス乾燥システム




・保守

平成 6年 4月 窒素液化システム乾燥器交換
平成 6年 8月 ヘリウム液化機膨張エンジン整備
平成 6年 8月 バッファタンク等肉厚測定・浸透探傷試験
平成 8年10月 液体ヘリウム供給用トランスファーチューブ真空漏れ修理
平成 8年11月 窒素液化システム送液電磁弁焼損修理
平成10年 2月 窒素液化システム冷凍機オーバーホール
平成10年 3月 ヘリウム液化用圧縮機の継手油漏れ修理
平成10年 4月 ヘリウム液化機膨張エンジン整備
平成11年 4月 ヘリウム液化用圧縮機オーバーホール
平成11年 4月 窒素液化システムPSA吸着剤交換
平成11年 4月 ヘリウムガス高圧フレキシブル配管ガス漏れ修理
平成11年10月 窒素液化システム冷凍機リジェネレータ交換
平成11年 8月 ヘリウム液化機メインベアリング交換
平成12年 8月 窒素液化システム圧縮機オーバーホール
平成12年 9月 ヘリウム液化機オーバーホール



・営繕

平成 8年 9月 ヘリウム液化室に防雨ひさし設置、窒素液化室に空冷用吸気扇設置
建物周囲に犬走り設置
平成 9年 9月 駐車場のライン整備
平成10年 9月 窒素液化室排気ダクト設置
平成12年 3月 機械工作室に油煙排気用換気扇設置、冷却水の中水化と活水器設置
通気窓に台風吹込防止カバー設置、外壁雨漏り補修


資料11

極低温センターの利用者登録状況


年度 登録 登録 保安教育 保安教育
(平成) 研究室数 人数 受講人数 実施日
4 47 217 217 6/5(金)、9(火)、11(木)、12(金)
5 75 391 170 5/11(火)、12(水)、13(木)
6 66 340 161 5/10(火)、11(水)、12(木)
7 62 306 136 5/9(火)、11(木)、12(金)
8 62 304 138 5/9(木)、10(金)、13(月)
9 61 294 122 5/8(木)、9(金)、13(火)
10 71 342 151 5/12(火)、14(木)、15(金)
11 74 351 130 5/10(月)、12(水)、13(木)
12 72 360 140 5/9(火)、11(木)、12(金)


資料14



極低温センター保安管理組織

センター長 二木治雄(高圧ガス製造保安責任者免状 乙種機械・丙種化学)
(保安統括者) 理学部教授(併任) 内線8890

保安係員 仲間隆男 (高圧ガス製造保安責任者免状 丙種化学)
理学部講師(併任) 内線8514

保安統括者代理者 小柳元彦
教育学部教授(併任) 内線8355

保安係員代理者(1) 矢ヶ崎克馬 (高圧ガス製造保安責任者免状 丙種化学)
理学部教授(併任) 内線8523

保安係員代理者(2) 玉城純孝 (高圧ガス製造保安責任者免状 丙種化学)
理学部技官(併任) 内線2414

運転操作員 宗本久弥 (高圧ガス製造保安責任者免状 丙種化学)
極低温センター技官 内線8954


資料15


高圧ガス保安法による各種検査実施状況




・完成検査

平成 3年 6月 ヘリウム液化システム設置
平成 4年 8月 窒素液化システム設置
平成 6年 5月 ヘリウムガス回収用圧縮機大型化
平成 8年11月 液体窒素送液電磁弁交換(焼損の修理)
平成 9年 3月 ヘリウムガス回収用ボンベ大型化(カードル)
平成11年 4月 ヘリウムガス高圧配管の交換(ガス漏れ修理)
平成12年 3月 ヘリウムガス乾燥システム設置



・定期自主検査 (年1回)

平成 5年 7月
平成 6年 8月
平成 7年10月
平成 8年11月
平成 9年11月
平成10年 8月
平成11年 8月
平成12年 8月



・保安検査 (年1回)

平成 5年 7月
平成 6年 9月
平成 7年11月
平成 8年12月
平成 9年12月
平成10年12月
平成11年12月



・容器再検査

平成 6年 7月 ヘリウムガス回収用ボンベ
平成12年 3月 ヘリウムガス回収用ボンベ(カードル)